インドネシアについて

私のインドネシア歴もついに5年になった。

駐在というわけではなく、長期出張ベースではあったが、半分以上はインドネシアに滞在し、色んな場所に行ったり、色んな人と出会ったので、非常に濃い体験が多かった。

インドネシアは、キラキラの国だとよく言っている。キラキラと言えば、日本語のニュアンスとして、キラキラ輝いているというのがあり、確かにインドネシア人は明るい人が多く、みんな笑顔でキラキラ輝いているが、もう一つ、kira kiraというインドネシア語があり、これは、だいたい、という意味がある。インドネシアという国は何でも、だいたい、である。時間もだいたい、約束事や決まりもだいたい、もちろん人にもよるが、多くの人はそういうマインドである。だから、輝いているという意味と、だいたいという意味、両方からキラキラの国だと思っている。

インドネシアでは、色んな面白いことが起きた。ある時、インドネシアのタクシーの中にパスポートなどが入ったカバンを忘れたことがある。空港で飛行機に乗らないといけなかったのに、パスポートなどがないため、飛行機にも乗れず途方に暮れていた。最終的には、そのタクシードライバーが盗んでいたのだが、当初、タクシー内にはなかったと言い張り、警察にも一緒に行き、紛失届を提出した。しかし、とあることがキッカケとなり、その後警察が彼の自宅に入り込んで、私のカバンを取り返してくれた。実は、彼は別人になりすまして、私にメッセージを送ってきていて、カバンを返す代わりにお金を俺の口座に送れと言ってきていた。よって、紛失届を途中で盗難届に変えて、捜査をしてもらい、その携帯電話の逆探知で、彼はあっけなく捕まってしまったのだ。

面白かったのはその後で、事情聴取という名目で最初警察に呼ばれ、事件の経緯などを説明させられ、朝から晩まで色々と話した。これで終わりかと思ったが、その後も、日を改めて、何度も呼ばれ、同じことを聞かれ、さらにだんだん雑談も多くなってきた。それが、5回くらい続いて、最後の方はほとんど雑談という感じで、10人くらいいる小さな部屋の全員が私との会話に夢中で、大笑いし、さらにランチまで一緒に食べるようになった。ただ、そのような内容であっても、毎回正式に呼び出し状のようなものが会社に届くので、断ることは出来なかった。内心、私も楽しんでいたのだが。ただ、困った質問もあった。それは、お前の宗教はなんだ?と聞かれたので、無いと答えたら、それはだめだと言われた。じゃあ、神道で、と答えたら、それはどんな宗教だと聞かれ、いやよく知らないと言ったら、お前自分の宗教のこと知らないのか?と言われ、いやいやだから俺は宗教は信じてないんだって、選べと言われたから言っただけで、と言ったが、説明しろ、としつこいので、ネットで調べて見せた。とりあえず、気の抜けたラフな取調べを楽しんだ。

またこんなこともあった。ある町から特急列車で別の町で移動する際に、間違えて違う行き先のものに乗ってしまった。途中切符を確認する車掌さんに指摘され、慌てたが、なんと数分後に、その車掌さんが特急列車をとても小さな駅で臨時停車させてくれて、私を降ろしてくれた。さらにその駅の職員に事情を説明してくれて、戻りのチケットの手配まで済ませてくれていた。特急列車が停まる駅ではなかったので、ステップを使って降りるしかなく、またホームの長さが全然足りず、ホームには降りられず、線路に降りてホームに着いた。日本ではまずあり得ない対応だったと思うが、そのあたりも、キラキラだからこそ出来ることなのかもしれないと思った。

また、長距離バスに乗った時も、ターミナルにはたくさんのバスが来るので自分の乗るべきバスが分からないと伝えると、バス停の職員が俺が来たら教えてあげるから、そこで待っててと言われたので、ベンチに座っていたが、待てど暮らせど、2時間以上声がかからなかった。30分に一本あると言ってたのにおかしいなと思ったが、キラキラだから仕方ないかと思い、もう30分待ったが、何も言って来ない。仕方がないので、彼に確認すると、あっ、ごめん忘れてた!もう5回以上来てるよ、と言われ、こっちがキラキラだったのかと思い、えー!とつい大声を出したら何事かと、他の乗客も集まってきたので、私が、この人に私のバスがきたら教えてって頼んだのに、忘れてて、、という話をしたら、その乗客たちが一丸となって、俺が教えてやる!と、みんなが来るバス、来るバスに、これはなんとか行きだから違う、これは回送だからダメとかコメントを言いながら待った。そして、目的のバスが到着した時は大騒ぎ!あれだ、あれだ!とみんなが口々に叫び、一人のおばさんはバスの前に立ちはだかり、運転手にこの人が乗るから止まれって言ってくれた。そして、運転手も何事かと思ったらしく、俺の隣に座れ、お前の停留所がきたら教えるからと言ってくれて、本当にちゃんと教えてくれた。心優しい人々であった。

あと、インドネシアは、私が住んだ国、日本を除くと、ずば抜けて料理が美味しい。ナシパダンがやっぱり一番好きだが、魚も、スープも、串焼きも、美味しいものばかりである。日本食は本当に美味しいが、日本は最近、コンビニ、ファミレス、ファストフードなど外食のほとんどが、工場で作った食べ物が多くなってしまって、おいしく安心して食べられる外食が少なくなっていると思うが、インドネシアの屋台やレストランではその場でちゃんと作っているものが多く、とても美味しい。

インドネシアについては、まだまだ書きたいことも多いが、とりあえず、今回はここまで。また、気が向いたら、書いていこうと思う。