引きこもりについて

前回の記事で学校やいじめの問題について書いたが、それと関連の深い引きこもり問題について今回は書いてみたい。

まず内閣府が出しているデータを紹介する。

https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01gaiyou/s0_2.html

 

これを見てわかるように非常に多くの労働力が失われている。

そんな中、外国人労働者の受け入れや少子化の問題が様々な形で議論をされている。しかし、この問題に関しては上記の二つの問題よりも遥かに声は小さいが、改善される労働力の規模や改善の可能性はこちらの方が高いのではないかと考えている。

まず、私は単にこの人数が労働力の頭数だけの問題ではなく、現在引きこもりしている人のなかには、高等教育を受けている人が多いことや、一般教養やパソコンの知識もありまた体も健康である人が多いことから、社会においても即戦力になり得ると考えている。

外国人労働者の場合は日本に来ても、最初は言葉や習慣の問題があること、また少子化に関しても今仮にに多くの子供が生まれたとしても成長し労働力となるまでには少なくても20年はかかる。よってこの労働力鉱山とも言える山を掘り起こすことは、労働力不足の日本においてとても重要なことである。

そしてこの問題を解決しなければいけない理由として、労働力確保だけではなく、現在彼らを支えている彼らの親たちの高齢化も大きな理由である。親たちの体力や収入が減る、または親たちの死によって、彼らの生活は維持できなくなり、社会不安にも繋がりかねない。

この問題の解決にあたって、様々な民間レベルで、物理的に家の壁を破壊し引きこもっている人を施設に送ったり、または本人を説得しなんとか外の世界で簡単なアルバイトをさせるような努力はしているが、うまくいっていないケースも多い。そして、その活動の規模もまだまだ小さい。

私が今考えている解決方法はもう少しソフトな方法である。

まず、現在日本の会社は様々な規制や制度の変更により雑務が異常に増えている。IT機器の発達、またオンラインミーティングなども増え、業務は非常に効率化しているにも関わらず、増えた雑務により労働時間はさほど変わっていない。そこにさらに追い打ちをかけるように世間から働き方改革というプレッシャーが会社にかけられ非常に苦しい経営を強いられている。

そこでそのような業務時間の短縮を阻害している雑務の一部を引きこもりの人たちに移管出来ないかと考えている。

もちろん社外秘の資料やデータは外部に流せないので、最初は非常に簡単なそしていくら外部に漏れたとしても問題のないような資料の修正やまたは作成を安価(最低賃金はしっかり守る)で依頼するところから始めてみる。そして彼らに仕事をする楽しさ、そしてその仕事による対価を得る楽しさを体験してもらい、そのなかで、お互いに少しずつ信頼を高めていけば、本人がまた別の仕事を探すようになれば良いし、また会社としても彼らに仕事を任せることを増やしていき、いずれは派遣社員として、次は正社員として雇い直すことも考えられる。これにより、会社としても、社員に残業代を払うよりも安く、経費も抑えられる。

また資料作成のような単発の仕事ではなく、例えば現在日本中に設置されている防犯カメラの監視、インターネット上に溢れる情報の整理など、まとまった時間が必要な作業をお願いすることもできると考えている。さらに、少し外に出られるような人は今過疎化で苦しんでいる農村部での仕事なども考えられ、地方再生の鍵になるかもしれない。彼らは彼らなりのアドバンテージがあるはずで、それを活かす工夫が必要だと考えている。

ケネディ大統領が障害者の支援を考える際に障害者を納税者にすることだ、と演説したのは有名な話だが、引きこもり問題も同じように考えるべきだと思っている。それは単にお金を稼ぐということではなく、人のために役に立っているという実感がとても重要なのだと思う。そして、それはもちろん簡単なことではないが、少しの工夫と社会の協力があれば、それは可能であり、またその協力よりも大きな見返りがあるものと考えている。

引きこもっている人の多くは心に大きな傷を抱えている。その傷そのものを社会が癒すことは難しいが、その傷を持ちながらも、社会に復帰するチャンスを与えることはできるのだと考えている。どんなに苦しく辛いことがあっても、そのことにずっと固執し動き出さなければ何も始まらない。むしろ苦しくて辛くてもどこかのタイミングで小さな小さな一歩でもいいが、とりあえず歩き出すことで少しずつ傷が癒えることもある。その歩き出すきっかけを社会が与えられれば良いのだと思っている。