アフガニスタンについて

アメリカ軍撤退開始から、急展開を見せるアフガニスタン情勢であるが、いくつも腑に落ちない点があり、日本の不思議な外交政策が浮かび上がって来る。

まず前提になるのが、私がカナダにいた際に、セルビアから移住した人たちと一緒に仕事をしていた時の話だ。よく彼らから言われたのが、1999年のNATO空爆時に在セルビア日本大使館を閉鎖しなかったエピソードだ。もちろん、日本は米国寄りの国であり、すなわちNATO側と思われていたが、世界から孤立したセルビアを日本は見捨てなかったと、今でもセルビア人の心に日本の当時の対応が残っているとのこと。その後にも両国の良好な関係は続き、東日本大震災の際、世界に先駆けて、セルビアから義捐金が届いたことはまだ記憶に新しい。そして、恥ずかしながら、そんなセルビアとの友好の歴史を彼らと話すまでは知らなかった。日本の歴史教育も、こういうところをしっかり教えてほしいと思った。1999年はもう私の義務教育は終わっていたから、その後の世代は習っているのかもしれないが。

同じような経験で、学生時代に一人旅で三重から紀伊本線で紀伊半島をぐるりと回ったときに、和歌山の串本という所でトルコの話を聞いて、初めてトルコと日本の絆を知ったということもあった。その後、トルコ人に聞くと、トルコでは教科書にも載ってるというから、これももっと日本の小学生や中学生の教科書に載せてトルコ人と話す時に日本人はこのことを知らないなんてことがないようにして欲しい。(実際には習ったのかもしれないが)

少し話は逸れたが、今回のアフガニスタンの件、日本は何か特別なことを考えているのではないか?と思っている。当然、日本の同盟国はアメリカであり、その他の所謂西側ヨーロッパ諸国であるが、日本と中東は独自の外交がある。それは、イランやイラクなどでもそうであるが、反米国家ともうまく付き合い続けている。

 

まず、あまり日本では報道されていないが、ロシアの動きとしては、大使館職員を任期満了や休暇のために帰国させることはあっても、業務は引き続き継続していき、しかも、カブールは安全だと強調している。これは、すっかりロシアがタリバン側と交渉を終え、外交がスタートしたことを認めたようなもの。しかし、日本では、日本の大使館員などがなかなか帰れないとの報道になっている。もちろん、それが日本政府の不手際という報道にはなっていないが、他の国はどんどん退避成功しているのに、何かおかしいと思ってしまう。ロシアの例から、退避していない国は、すでにタリバンと何らかの取引ができていると考えざるを得ないのだ。

そして、ここからは完全な憶測。そもそもアフガニスタンの情報はほとんど入ってこないので、何が正しいかも全然わからない。だからむしろ、今回のブログは憶測というよりむしろ小説を書いているような感覚だ。よって、将来これとは全く違う未来が訪れるかもしれないし、そもそも前提条件が全く検討違いということもあると思うが、ご容赦頂きたい。

まず、日本はわざと大使館員を退避させていないのではないかと考えている。それはセルビアの時と同じようにアフガニスタンタンとの友好な関係を築くためだ。アフガニスタンを現在事実上支配しているのはタリバンという組織であるが、多くの国ではタリバンを正式な政府だと認めていない。 しかし、その国の政府が誰であるかを決めるのはその国の人々であり、決して外国人ではない。よって、相手がタリバンであろうがなんだろうがアフガニスタンの現在の決定権を持っている人と外交をするのは、間違っていないと思う。

今、他の国と同じように日本も大使館を閉鎖すれば日本とアフガニスタンの関係は終わってしまう。 また、アフガニスタンにとっても、現在武力で奪った国をこれからは統治していかなければならないので、つまり国民を食べさせるために、何らかのビジネスや外交が必要になってくる。その時にアメリカなどの欧州は助けないだろうし、またロシアは助けるかもしれないが、現在のロシアはそこまで大きな力も持っていないことを考えれば、日本の存在は非常に彼らにとって大きいはずだ。よって、日本も助けたいし、アフガニスタンも助けて欲しいという関係が見え隠れする。

しかし、ここで表立って日本が、タリバンを援助しますとか、外交や貿易をしますなんて、口が裂けても言えないわけで、何か苦労しているような感じ、つまりはやむを得ない理由というテイで大使館の業務は続けていくのではないかと思う。そしてそれもタリバンの後ろ盾があってのことだと考える。

では、日本にとってのメリットは何だろうか。一つはアフガニスタンという国は中東とアジアのちょうど真ん中に位置する国で、アフガニスタン自体では石油は取れないがアフガニスタンから石油を買うことはできる。次に、アフガニスタンアメリカや欧州と決裂していれば、今後のインフラ設備などの受注を日本がしやすくなる。国が安定した際にいろんなインフラを整えるという段階に入ると思うが、やはり大型のものはアメリカやヨーロッパの企業が強く、そこが出てこないとなればまさにブルーオーシャン市場である。そして、アフガニスタンの地理的な特徴からアフガニスタンでの成功は中東や中央アジアに波及していく可能性がある。

よって早い立ち直りを実現したいアフガニスタンと、石油と中東中央アジアに大きなビジネス的な拠点を手に入れたい日本の蜜月な関係が今後予想される。ただ、以前のブログにも書いたが、これからは知性と感動の外交になるはずであり、目立ったメリットを求めなくても、ロシアやアメリカに翻弄されたアフガニスタンをどう助けるか、日本の外交手腕の見せ所なのかもしれない。

しかし、うまくやる必要がある。

先ほども書いたように表立って大使館員を残したり、何か企業を派遣したりすれば、アメリカや欧州諸国からの非難は免れない。あくまで全世界との協調や同調をしている姿を見せ続ける必要がある。

しかし、ここを乗り切った後、日本は中東と中央アジアにきっと大きな親日国を作るのではないか、と期待している。

まさに夢物語であり、実際は全然違うことが起きるかもしれないが、セルビアの話をふと思い出し、こんなことが起こればいいなと、空想している。