農業について

学生時代に、いくつかのビジネスアイデアコンテストというものに参加し、農業ビジネスについて書いて、賞をもらった。その中の一つの賞金としては、10万円くらいで、学生にしてはものすごい大金だったのを覚えている。

あれから、農業に対して色々考えることもあったが、仕事とは関係ないので、あんまり深く考えることはなかった。

しかし、最近、以下のようなニュースを見て、今回、久しぶりに農業について考えてみた。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210913/amp/k10013256811000.html?__twitter_impression=true

大豆の価格が上がってるとのこと。これは、農業の問題、経済の問題の両方から考える必要があるが、まずは農業側のことだけ、今回は書いてみたい。

まず、自給率100%に対する日本人というか、政府の飽くなき挑戦はよく知っているが、それが米ばかりに集中していて、小麦、大豆には何故か無頓着。むしろ、米より大豆の方が幅広く日本人の食卓に浸透しており、小麦もだいぶ食卓に並んでいる。野菜類はだいたい自給率100%に軒並み近いので、やはり課題は大豆と小麦だと思う。

私は自給率が高いに越したことはないと思ってはいるが、米のように補助金で無理矢理自給率を100%にし、競争力を失ってしまう産業を作るのはどうかと思うことと、逆に、食卓に多く並ぶ小麦や大豆は10%近辺であることや、家畜のエサなどはほぼ100%輸入品であるから国産の牛肉と言っても食べてるものは海外製だったりもする、という2つの方針の矛盾が問題だと思っている。

まず、貿易というのは、お互いに得手不得手を補完し合うためにやるものであり、自分の国でたくさんいいものが作れればそれを売ればいいし、自分の国で生産出来ないものは買えばいい。だから、無理矢理全てのものを日本で作る必要はなく、頼ることもまた国益に繋がる、というのが前提である。まず、米というのは、日本の主食であり、他の国の方がいいものをたくさん作れたとしても、日本でちゃんと作るべきだということで、保護しながらやってるのかもしれないが、少しやり過ぎな気もする。アメリカに住んでいた頃、日本の米は高くて買えなかったので、同じジャポニカ米であるカルフォルニア米を食べていたが、遜色無い味であった。もし、また米不足にでもなったら、カルフォルニア米を輸入してはどうかと思った。また、大豆や小麦の主な輸入先はアメリカである。これは、また何かそういう密約のようなものがあるのかよく分からないが、こんなによく日本人が食べるものを、そして決して日本で作れないわけではないものを大量に輸入し続けているのは、何か理由があるのかと疑ってしまう。大豆は、醤油、味噌、豆腐、納豆、枝豆などなど、日本食の根幹を担うものが多く、また小麦にしてもパン、うどん、お好み焼き、など、こちらもまた小麦を食べない日はないというレベルである。よって、米にしても、大豆や小麦にしても、我々の食卓から消えないように調整していくのが、政府のやることであり、今はあまりにも方針がアンバランスであり、危険な状態と言える。

まず、米については、日本だけで作っているから、日本が災害や天候不良があった際、たちまち足りなくなるが、普段は規制して輸入してないものだから、大慌てする。以前の米不足の時がそうだ。また、米の保護貿易のために多くの資金が投じられているが、それにより他のものを衰退させているのかもしれないという問題もある。よって、日頃からカルフォルニア米ようなものを輸入しておき、ポートフォリオではないが、リスク分散は必要である。また、大豆と小麦は、国産比率をもっと上げることと、輸入先の多角化をすることが重要である。どちらも日本の食卓からは切り離せないものなので、例えばこの先日本の経済力が下がっていくと、(すでにその傾向はある)たちまち、輸入品の値段が上がるだけでなく、そもそも買えなくなるということも想定される。そんな時に国内である程度生産出来る基盤を整えておかないと、大豆と小麦のない生活を余儀なくされる。輸入先の多角化も重要で、今回の記事のようにアメリカからの船舶が、という問題もそうだし、アメリカの豊作不作に値段が左右されるし、一番の問題は、遺伝子組み換えなどアメリカが進めているものをそのまま受け入れざるを得なくなることである。それこそ、アメリカ以外からも輸入していれば、遺伝子組み換えは国民に食べさせたくないので、別の国から買おうということになるが、今のようなアメリカ頼みでは、それも出来なくなる。私は遺伝子組み換え大豆が危険だとか言っているわけではなく、選択肢がないことが問題だと言っているのだ。もちろん、遺伝子組み換えも危険なのかもしれないが、それははっきりとは分かってないはず。

また、遺伝子組み換えにも似た話で、TPPなどで日本の農家が潰れるという話もあったが、それもそのはず、そもそも輸入品と国産では、同じ土俵で戦ってない可能性があるのだ。まず、日本の農家というのは、必ず農協の基準に合わせて野菜などを作る。それは、色んな規制があり、大きさ、形、色など厳しすぎるとも言えるもので、それを外れると売りに出せない。よって、廃棄が多くなり、売られるものの値段が上がる。しかし、輸入品は農協のチェックが行き届かない。全くチェックされてないとは思わないが、日本の農家が受けている厳しいチェックほどでないと考えられる。特にどんな化学肥料が使われているのか、どんな農薬が使われているのか、もはや相手の申告以外では、確認のしようがない。よって、国産と名のつくものは、高い品質が担保されていると言えるが、それは本当に必要な品質なのか、廃棄を減らし、値段を下げる努力があってもいいのではないか?という気もする。

そして、民間企業的に日本の農業をみてみると、強みもたくさんあり、輸出できる技術も見えてくる。例えば、韓国で2018年に行われた冬季オリンピックカーリング女子が食べていたイチゴ。とても美味しいと評判になったが、元はといえば、日本の生み出した品種。どうしてなのかはよく分からないが、今は韓国でも作られているとのこと。糖度や色合いなど、色んなものが従来のイチゴとは違い、日本の開発力が世界に通用したことを証明する一幕でもあった。すでに、クルマやその他の工業製品は、日本の技術を色んな国に持っていき、現地生産をして売るということが行われている。私の考えでは、日本の農業技術を、工業製品と同じように世界的に展開出来ないだろうか?と考えている。実は日本の農業というのは、地域ごとに、ブランド製品を作っており、門外不出の技術としてしまっているが、そうすることによって、無断で盗まれることがあったり、そもそもマーケットを限定してしまっているという問題が出ている。よく海賊版と戦うためには、本物をそれより安く売り、海賊版が太刀打ち出来なくなるようにすることと言われるが、まさにこれもそうで、現地にその品種のプロが赴き、現地の気候などに合わせながら作ることで、いいものが安く作れるので、海賊版にも勝てる。以前書いた種子法廃止はこの辺りを上手く突かれたという印象で、日本農業の衰退に繋がる。

 

このように色々考えてみたが、農業というは他の工業製品のように、優秀な一般企業がどんどん進められるというものではなく、呑気な官僚や地方自治体、農協などが絡む非常に動きの遅い体制になってしまっている。だから、優秀な日本の農家が苦労するのだ。もう少し大局観を持ち、戦略的に日本の食卓に安全で美味しい農作物も効率よく、リスクヘッジをしながら届け、日本が農業で稼げるシナリオを書ける農林水産省であってほしい。私は農業の専門家ではないので、間違っている情報や思いつきが多いかもしれない。実際はすでに色々やってるのかもしれないが、データだけをみると、やはり物足りなさを感じてしまう。農業は伝統的に規制の中にいるが、もしそう規制するなら、規制する側はちゃんと責任をもって、農家を守り、発展させていくべきであるが、どうもその成果は見えない。