外交的ボイコットについて

米国が中国の北京オリンピックに対して、外交的ボイコットをすることを表明し、その理由として、人権問題があるというが、なんか腑に落ちない。中国の肩を持つわけでもないが、米国のやり方は卑怯にも思えた。

中国は言葉の上では、対抗措置をするとかメッセージは出しているものの、そこまで重く捉えていない可能性もある。それは米国の求心力が以前のモスクワオリンピックの時のようなものではないことと、中国には経済的な関わりを重要視して、仲良く付き合ってくれる国も多いからこの外交的ボイコットの影響は限定的とみる見方もある。

ただ、私は中国の人権侵害があったとか、なかったとか、情報がどちらが捏造しているとか、そんなことを議論するつもりはなく、このボイコットというやり方に対して、思うことを書いていく。

これは、車の技術、発電の技術、そんなものが日本をはじめとするアジアの国々に欧米勢が敗れると環境問題を取り出して規制をかけて、新しいフィールドでまたスタートさせる手法にも似ていて、私が見ていると、このボイコットもいつものパターンかと思ってしまう。

中国は飛ぶ鳥を落とす勢いで一気成長した。欧米諸国もそのなかで恩恵を受けてきたが、その規模が大きくなり、制御不能とみるや、人権問題を盾に圧力をかけていく。しかも、米国だけでやるわけではなく、オーストラリアやイギリス、今後もいくつか同調する国が出るかもしれないが、徒党を組んでやる姿もまた、卑怯に見えてしまう。挙げ句の果てには、民主主義サミットなんかもあり、とても滑稽に思える。

ただ、どうもこれが卑怯だと思わない人が多いのは、根底にアンパンマン理論が心の中にあるからかもしれない。アンパンマンというのは、勧善懲悪のよくある子ども向けアニメであるが、絶対悪のバイキンマンアンパンマンやその仲間たちが武力で制圧する物語。やや乱暴な言い方かもしれないが、調和を乱すバイキンマンはいつもみんなを困らせ、アンパンマンに助けを求め、それをアンパンマンが制圧するのだが、アンパンマンには多くの人仲間がいて、しょくぱんマンやカレーパンマンとともに、トリプルパンチなどでバイキンマンを制圧する。ただ、子ども心に、これをイジメだと思う人はおらず、悪いことをしているのだから、やられて当然といういじめっ子理論が浸透している。もちろん、アニメの影響がどこまで影響があるのか、それはハッキリとは分からない。素晴らしい映画やアニメが世界中に溢れても、世界は平和にならないわけだし、we are the worldが世界に響いても、世界は変わらないので、アンパンマンがこのようなストーリーで、それが悪い奴には制裁してもいいんだとみんなが思うようになったとは考えにくい。しかし、人権問題という誰もが納得せざるを得ないようなもので、悪を指定して、それをみんなで叩くという構図が、まさにアンパンマンと同じであり、その構図に持ち込むと自然と米国の今回のボイコットは正しいことのように映ってしまう。

例えば、この後に中国に対して経済的制裁をしても、さらにその後に武力行使しても、きっと米国側は正義の味方アンパンマンであり、中国は悪のバイキンマンになってしまい、米国の行動が全て正当化されていく。

本当に米国がウイグル問題を真剣に捉えて、今回外交的ボイコットしたというなら、何故、上海夏季オリンピックの時は外交的ボイコットしなかったのか。当時だって当然、ウイグルの問題はあった。チベットの問題だって当時からあった。本当にそれが問題だと思っているなら、その時だってやれば良かったはずであるし、もっと言えば、それ以前のもっと昔からこれらの問題は知られていたが、その時はみんな中国と蜜月の関係を築き、経済的恩恵を享受していたのだ。

そんな背景から考えると、中国の人権侵害が本当にあったとしても、米国のやり方というのは非常に卑怯だと思うというか、本当の目的は他にあるような気がすることと、徒党を組んで中国を悪者に仕立て上げることなど、不可解な点も多く、今、一番に思うことは、この米国の行動に日本は追随しないで欲しいと思うことである。

人権侵害の有無、それの良し悪し、それはここでは議論しないが、米国が民主化という流れの中で、色々な国の政治を動かしたり、政権を転覆させてきた歴史がある。それは、ソビエト連邦の解体もあるが、南米やアフリカ、中東、色々な場所でやってきていて、今回それが中国にロックオンしているようにも思う。ただ、今までの国よりも中国ははるかに大きく、強大な力を持っているので、なかなか一気には出来ないだろうと思っているから、まずは今回のボイコットで悪という印象を広げ、次のステップを模索しているようにも見える。そして、最終的には中国解体ではないが、少しずつ独立運動を支援していくような流れになるのではないかと思う。

以前の記事にも少し書いたが、正しさを定義したくないというのが私の基本理念であり、正しさを盾に、自分を正当化し、悪と指定された人は何をやられても文句が言えないような社会はやはりおかしい。

この正しさを振りかざし、徒党を組んで、中国を攻めるやり方、やはりとても卑怯であると思う。ただ、冒頭にも少し書いたが、世界はそのやり方に限界があることを薄々気が付き始めており、これが計画の第一歩だとしても、最後まで完結できるのかどうかは、不透明である。