アルバイトについて

前回の記事で、アルバイト時代のことを書いたが、学生時代を彩る活動の中にアルバイトというのはやはり大きなウエイトを占めるのではないかなと思う。

まず、そうなってしまう背景として、日本の大学の学費が高いことである。国立大学でも年間50万、それ以外にも、教材やその他の費用もかかる。それに一人暮らししている場合には家賃だの、食費だのとかかり、さらにそれが私立大学ともなれば、余程両親が裕福でないと、アルバイト無しでは生活出来ない。奨学金制度もあるが、返済不要のものならいいが、返済のあるものは、奨学金ではなく単なる学生ローンであり、借りるのは慎重に考えないと将来の生活に負担を先送りしているだけになってしまう。

さらに、大学生時代は直前の高校時代のような部活や受験という大きな負荷から開放されている。高校時代の授業以外の時間のほとんどは部活と受験勉強に使われたのに対して、大学では進級のための最低限の勉強をした残りは、自由に使える時間が多い。大学や学部によっては進級の条件が厳しく、毎日、とても勉強以外をする時間が取れないというところもあり、また一般的には海外の大学は特にそうだと聞くが、日本の大学はまだ卒業することは入学するよりも楽、つまり厳しい入学試験を通過すれば、卒業はそこまで難くない。

つまり、お金はなくて、時間はあるという大学生活というのが、日本の学生の姿なのだと思う。

私はというと、まず大学入学の際、浪人時代を経験しているのだが、浪人時代に入る前だったか、後だったか、(両親もしばらくはっきり伝えてくれてなかったのでいつからかは曖昧)父が失業し、大学入学の時には父の収入はほとんどなかった。この時には、父から入学と同時に奨学金をもらうようにと言われて、所謂学生ローン型の奨学金を申請したのだが、その申請には親の収入証明または源泉徴収票が必要だったので、その時に初めて家計の大変さに気がついた。

よって、入学と同時にアルバイトをいくつも掛け持ちした。

以前の記事でも書いた神宮球場でのビール売りのアルバイトが私の人生第一号のアルバイト。その後、家庭教師をやって、計三人の生徒を持った。そして、配膳スタッフといって、都内のホテルや式場に派遣され、パーティーでの配膳や会場の設営などをやったりする。これは、新宿のホテル、虎ノ門、銀座、表参道、池袋、高田馬場、横浜など、色々な会場で仕事が出来た。あとは、試験監督。これは色んな試験会場に派遣され、国家試験など様々な試験の監督をする。そして、大学院生になってからは、学内のアルバイトでTA(ティーチングアシスタント)というものがあったのでやっていた。

居酒屋、ファーストフード、コンビニ、スーパーなど、多くの学生がやっていたこのようなアルバイトを私はやったことがないが、この辺りの話は色んな人から聞いているので、自分の経験と友達などから聞いた話を元に、社会人になった今だからこそ思う、アルバイトの選び方、働き方を書いてみたいと思う。

少し前置きが長くなったが、ここからが本題である。

まず、今から考えると、学生時代の一分一秒はとても貴重だったように思う。とにかく若いし、元気だし、頭も身体も一番動くという時期なので、本当に何でも出来るし、何やっても楽しい時期だったように思う。社会人になり、自由な時間なんてほとんどなくなり、もちろんお金は稼げるようになったとは言え、やはり時間の貴重さを実感する日々である。よって、学生時代にやるアルバイトで、単に時間を売るようなアルバイトは勿体ないように思う。例えそれで高い時給をもらえても、学生時代の時間の貴重さには勝てない。

次に、社会人になった時にアルバイトの経験が活きる場面が意外と多いということもある。これは、学生時代には想像していなかったことだが、大学での勉強というのは、かなり専門的になるので、社会に出てそのまま使える人は意外と少ない。なので、私は今の日本の大学のように進級をやたらと厳しくしない方針は賛成で、学生時代は自主性が大事であり、アメリカの大学に留学した私の友達の何人かは毎日勉強を夜中までやっていたという人が多く、それも考えものだなと思った。

よって、貴重な学生時代の一分一秒を有効に活用出来るアルバイトを探していくことが大事だと、今だから思える。どうせアルバイトなんだし、適当にやろうでは時間が勿体ない。当時は、時間の貴重さにあまり気がついてなかったし、とにかくお金がないという状態から脱することばかり考えていた。そのためか、大学時代はアルバイトと奨学金、さらに自宅から自転車通学出来る距離に大学があったことから下宿もしなかったので、親からの支援はなかったものの、学費などを全部自分で払ってもなお、それなりに余裕のある生活が出来ていた。しかし、今なお、奨学金の返済は続いているので、先程も書いたが、返済型の奨学金とは学生ローンで、負担を先送りしているだけなのである。しかし、それでも、学生時代の貴重な時間を買っていると思うと安い。社会人になればそれなりにお金は入ってくるが、時間はもう戻らない。

そこで社会人目線で見るいいアルバイトとは何か、私が考えるのは以下である。

①いい仲間に出会えるアルバイト

社会人になると、会社関係の人が交友関係の大部分になり、なかなか仲間には出会えない。アルバイトは本当の友達を作る最後から二番目のチャンスだと思う。ちなみに、最後のチャンスは、会社の同期入社組。この日本式の同期入社という制度も最近は変わろうとしてきたが、私はこの制度はとてもいいと思っている。3月に大学または大学院を卒業して、4月から同期入社して、一緒に研修受けて育っていく。私もたくさん同期がいるが、みんな最高の仲間である。

②社会と繋がれるアルバイト

大学というところは学問の場所なので、社会とは少し、というかだいぶかけ離れている。例えば、学会に参加するとか、企業と共同研究をやることで繋がることも出来るが、これは学問としての繋がりなので、どちらかというと大学の延長であり、企業や社会というものの泥臭さは体験出来ていないように思う。アルバイトというのは実際にお金をもらって働くので、そこには責任がある。また、この社会の血と言えるのは今はお金であり、そのお金の循環の中に入ること、それが社会と繋がることになるわけだから、やはりアルバイトは社会の玄関である。

③時給が良いアルバイト

これは単に短時間でたくさん稼げるから、ということだけではなく、時給がいいアルバイトは往々にして、しっかりした働き方を求めるものが多い。もちろん、詐欺まがいの高給アルバイトは良くないが、高い時給には高いスキルが求められ、その高いスキルを学び、実際に稼げるようになることはきっと社会人になっても使えるスキルになるはずである。

④歩合制のアルバイト

時給制のアルバイトがほとんどではあるが、私のやった神宮球場でのビール売りのように歩合制のアルバイトがあれば、やってみてもいいと思う。なかなかないと思うし、訪問販売とか、ネズミ講の類のアルバイトなどは良くないので、あくまでもいいのがあればという条件で。やはり、歩合制だと自分で工夫したり、失敗したり、とにかく売れるためにどうしたらいいのかと真剣に考えるので、それは社会人になってからみんなが毎日一番たくさん考えていることであり、まさに仕事の考え方に直結している。

 

以上。

社会人になってから、たまにアルバイトをしたくなる。それはお金のためではなく、アルバイト仲間のみんなで連携して働く体験をまたやりたいという想いである。サークル活動は社会人でも出来るが、それにはお金をもらう厳しさがないので、またアルバイトとは少し違う。そんなことを考えながら、色んな場所で見かける学生アルバイトを懐かしく、そして少し羨ましく眺めている。