サウジアラビアについて

仕事をしていると、色んな経験をさせてもらえるってことにも繋がっていくのだが、今年は人生で初めて、中東の国々へ行くことが出来た。特にサウジアラビアは自分の中でかなり印象的だったので、今のうちにまとめておきたいと考えた。

まず、日本人の中で、サウジアラビアという国の名前を知らない人はほとんどいないと思うが、場所だの、面積だの、細かいことになってくると、全くの未知の世界と言っても過言ではないだろう。

まず、サウジアラビアと聞いて、真っ先に連想されるのが、石油だろう。サウジアラビアの貿易をみてみると、輸出の大部分が石油であり、石油はサウジアラビアの発展と存続の礎であることは間違いない。資源のない日本が頼っているのがサウジアラビアからの石油でもある。

次に思い浮かぶのが、砂漠とラクダ。国土のほとんどが砂漠であり、飛行機から下を見た時に、かすかな緑さえ見つけられなかったのはとても印象的であった。インドネシアや日本から考えると信じられない光景だが、サウジアラビアには森や川、畑や田んぼ、そんなものは一切見かけなかった。もちろん、無いことはないのだが、私の滞在中には見つけられなかった。実際、貿易の上でも、野菜などの食べ物はほとんど輸入に頼っている。

3つ目は、メッカ。サウジアラビアでは、マッカと発音することが多いようだが、言わずと知れたイスラム教の聖地であり、全てのイスラム教徒が人生で一度は訪れたい場所がこのメッカであり、メディナ(メッカに継ぐ、もう一つの聖地)である。ただ、メッカという言葉や街は知っていても、ここがサウジアラビアだということを知らない人も、日本には多かった。

そして、最後。サッカー好きなら、ここ最近、多くの超スーパースター達がサウジアラビアでプレーしていて、サウジアラビアのサッカーは世界から注目を集めるようになった。そもそも、サウジアラビアがワールドカップでスペインを破ったこともあったが、サウジアラビア内でのサッカー人気は高まっている。その中で、クリスチアーノ・ロナウドネイマールベンゼマなどの超スーパースターや、各国の代表選手もどんどんサウジアラビア入りし、ここ最近のサッカー界を賑わせている。

まとめると、サウジアラビアの印象は、石油とイスラムと砂漠とサッカーである。

また、あまり知られていないこととしては、サウジアラビアの国土は日本の約5倍とかなり広大な土地を有してることと、周りのアラブの国々と比べても、サウジアラビアの大きさは桁違いである。例えば、2022年ワールドカップが開催されたカタール、かの有名なドバイやアブダビのあるアラブ首長国連邦クウェートオマーン、ヨルダン、イエメンもサウジアラビアに比べるとだいぶ国土は狭い。また、地政学的なことになると、近代史の話題の中心にいるイスラエルサウジアラビアの隣国であり、イラクとは国境を接している。これを考えると、サウジアラビアが外交などの面では難しい選択を迫られそうな場所にあることは十分に理解出来るだろう。また、その先にはイランがある。イランはサウジアラビア並に国土が広いが、若干サウジアラビアには及ばない。そして、海を隔てるとエジプトがあり、スーダンがある。そんな日本ではあまり話題になることが少ない中東地域の中心にサウジアラビアはある。また、メッカがあることで、周囲のイスラム教国のなかでも、宗教の中心でもあり、サウジアラビアの周辺国に対する影響力は大きい。

しかし、意外と日本では知られていないが、中東地域やヨーロッパなどでは話題沸騰なのが、NEOMプロジェクトだ。その中でも最も注目されているのが、The Line。サウジアラビアの北西部の海岸から横170km、幅500m、高さ200mの建物を建設するというもので、スーパー未来都市である。完成したら、一度訪れてみたいと思う。ただ、世界一を目指したジェッダタワーも未だに完成してないので、こちらもどうなるのか先行き不透明ではある。

さて、ここまでがサウジアラビアの概要であり、訪れなくても分かる情報ではあるが、訪れないとなかなかここまでは調べないとも思う。恥ずかしながら私は、サウジアラビアに行くことになってから初めて、上記の概要を知った。

そして、サウジアラビアに着いて、現地のサウジアラビア人と言っても、仕事で会う人にサウジアラビア人はほとんどおらず、ネパール人、インド人、バングラディシュ人、エジプト人という感じで、ホテルのフロントにサウジアラビア人がいたり、空港などのスタッフにもいたのかもしれないが、しっかりと話せたのは、たまたま出会ったUberの運転手だけであった。彼には片道2時間の場所へ往復してもらったりもしたので、車内で色々話せた。そもそも彼は学生時代に日本の東海大学に交換留学生として来ていたとのことで、日本語も少し出来るし、日本好きでもあったので、すぐに意気投合した。そんな彼との会話のなかで感じたサウジアラビアにも少し触れてみたい。

彼はイスラム教徒の鏡のような人物で、日本に来ても、お酒は飲まないし、豚肉は一切食べなかったらしい。そもそも、お酒については、人生が破滅するという思いがあり、拒絶しているとのことであった。

まず面白かったのは、フスハーの話である。サウジアラビア公用語であるアラビア語は、一般的に話される言葉(アンミーヤ)とは別に、フスハーという古代から使われてる言葉があるらしい。それはほとんど形が変わってないので、1000年前の人間が今例えば生き返ったとして、フスハーを話せば、現代のアラブ人と会話が出来るとのこと。日本で言うと、1000年前というと、1192年(いい国作ろう鎌倉幕府)よりも前なので、平安時代である。ありおりはべりいまそかり、の時代から蘇った人の言葉を理解出来る人は、限られているだろう、と考えるとフスハーはすごい。ただ、じゃあ我々外国人がアラビア語を勉強する時にフスハーを勉強して、話せるようになる必要があるかと、聞いてみると、外国人がいきなりフスハー話したら、strangeだと言われた。この辺りの使い分けはよく分からなかったが、アラブ諸国の歴史の深さを知れた。

アラブ諸国と一言で言っても、彼の中で、スンニ派シーア派では、かなり違うとのことであった。シーア派スンニ派に比べて、宗教心がないというか、緩いのだと。これは、個人差のある話だろうし、私自身、確認のしようがないので、なんとも言えないが、イランはシーア派サウジアラビアスンニ派とのことであった。

また彼は、日本はゲイやレズビアンが多いんだろ?と聞いてきた。サウジアラビアでは禁止だが、日本は自由なんだろ?だから、増えているんだ、みたいなことを言っていた。私は、増えてるかどうかは分からないが、差別はなくなってると言ってみた。すると、彼は、普通の男女が逆に差別されてるんだろ?と言った。そんなことはないよ、とその時は笑ってやり過ごしたが、後から彼の言葉が効いてきた。

確かに、最近日本では堰を切ったようにLGBTのことが話題になり、差別をなくせとか、平等の権利をとか、声高に叫ばれるようになり、私はずっとそれが普通のこと、当然のムーブメントだと思っていたが、違和感を持つようになった。ここで詳細な議論をするつもりはないが、大多数の男女、それはLGBTには属さない人たちの主張は全て差別的だと非難されるようになり、LGBT 的な発言のみが正しいとされることに気がついてしまった。例えば、心は女性、身体は男性といういわゆるTransgender の方が女性専用のトイレや温泉を使うことに反対することは、差別である。

でも、まだ8歳で一人で温泉に入れない男の子、または女の子が、その母や父と一緒に反対側のお風呂に入るのは禁止である。つまり、この年代の子どもを持つシングルマザー、シングルファザーは温泉に入れないのであるが、これは差別ではない。しかし、もし、シングルファザーの離婚原因が、婚姻後にトランスジェンダーであることに気が付いたことであり、心は女性であるという認定を受けた場合、その8歳の娘と女風呂に入ることを拒むのは差別である。そしてこれは、シングルマザーやシングルファザーに限ったことではなく、共働きが増えると、片方の親だけが仕事を休めて、片方が休めないために、片親だけで銭湯に連れて行かないといけないケースだって出てくるが、変な話、トランスジェンダーは、子どもに合わせて、身体上のお風呂と精神上のお風呂の両方を選べるのに対して、多くの男性または女性は当たり前だが、子どもの性に合わせてお風呂の男女の高い敷居をまたぐことは許されない。

これはあくまで一例だが、LGBTを差別しないということと、普通の男女が今まで通り、普通に暮らせる社会を壊すことは違う。サウジアラビアで、彼が言ったことは、そもそも男女で違うので、その違いに合わせた違う権利がサウジアラビアでは守られていて、日本では守られていない、または壊れかけている、そんなことを言いたかったのかと、思い返してみた。つまり、見た目の平等と本質的な平等の違いなのだと。

最後に彼の話で一番印象に残った事、それは、サウジアラビアサイゼリヤを持ってきたら、必ず売れる!と言っていたことだった。小難しい言語や宗教の話はお互い熱弁するものの、どちらもなんとなく受け入れられない一線のようなものがあり、盛り上がりには欠けた。ただ、サイゼリヤの話は彼が日本にいた時に一番お世話になったレストランであり、値段も味も量も、どれをとってもサウジアラビアにあるレストランより素晴らしいと褒めちぎっていた。イスラム教徒なので、豚肉関連の食事はダメなので、ベーコン、ハムや豚肉ソーセージを避けないといけないため、かなり多くのメニューが制限されるが、サウジアラビアでも出せるメニューに作り変えていけばいい。とにかく、日本のレストランの食事はどれも美味しかったとのことで、サウジアラビアでは高額なレストランは美味しいが、安価なレストランであれだけのクオリティはなく、その筆頭がサイゼリヤらしい。私もファミレスのなかではサイゼリヤは好きな方であり、家族で行くこともあるが、サウジアラビアで売れそう、とは思ったことはなかった。

サウジアラビア外資系の外食産業がたくさん進出していて、マクドナルドやKFCはもちろんのこと、トロント時代にお世話になったカフェのティムホートンズがあちこちにあったり、私のイメージとは少し違った。よって、こんな中ならサイゼリヤサウジアラビア進出も決して夢物語ではないのではないか?と思い、かなりこの話は盛り上がった。

 

最後に私の訪れたジェッダの写真を何枚か。

古い町並みが残る場所や世界一高い噴水、そして水上に浮かぶモスクなど、見どころ満載の街であった。これにジェッダタワーが加われば、本当に観光都市になる。

ここジェッダは昔からメッカやメディナに行く巡礼者が最初に着く港町で、メッカへの玄関口として、栄えていた場所だけに、かなりその歴史も古い。

今は、大きな飛行場が2つもあり、観光客やビジネス客用と、巡礼者用のものであり、二度目のジェッダ訪問の際にはジャカルタ経由で帰ったため、ガルーダ便に乗ったのだが、その際には巡礼者用の空港を利用した。

巡礼者はインドネシアから毎日何百人と来ているようで、全て巡礼ツアーで、みんなツアー会社ごとで同じ格好の団体客の中に、唯一の私服、さらにインドネシア人ではない乗客として飛行場にいたので、目立ってしまった。しかも、飛行機の出発時間が勝手に5時間早くなってしまっていて、元々の時間に飛行場に行ったのに、もう出発してしまったというから驚き。ガルーダ職員に相談したら、ホテルなどを用意してくれて、次の日の便を取ってくれた。ここでインドネシア語で交渉をしたため、大変驚かれたが、そのお陰かとても良い待遇で迎えいれてくれた。彼らが用意してくれたホテルは、ガルーダのパイロットやCAさんが泊まるホテルのようで、制服を着た人がたくさんいた。予期せぬ形で、二回巡礼者用の飛行場に行ったのだが、どちらの日もインドネシアからのツアー客で空港はごった返していた。よく巡礼ビジネスとか揶揄されるが、人口三億人のインドネシアが最大の顧客、ではなく、支援者なのかもしれない。見知らぬ土地で、インドネシアとの繋がりを持てたのは嬉しかった。


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