安室奈美恵と浜崎あゆみについて

安室奈美恵さんが引退した時は、何か大きなものを失ったような気持ちになった。そして、色んな特集が組まれ、過去の活躍を紹介されているのを見ていたら、どれも昨日のことのように思い出せることばかりだったのを覚えている。

そして、一方、引退はしていないものの、突然の結婚や出産で話題になった浜崎あゆみさん。歌手活動としてはここ最近、新曲の話題もあまりないように思う。

よって、二人とも全盛期は過ぎていて、振り返るにはちょうどいい時期なのかと思い、記事にしてみた。今回はあまりにも私感が偏ってしまったように思うので、全く見当違いだと思う人も多いかもしれないが、参考程度に読んでもらいたい。

 

実は今回この記事を書こうと思ったのは、あるニュース記事で、安室奈美恵さんが引退して2年が経つというのを読んでからだが、そこで同時期に活躍していた浜崎あゆみさんも思い出して、二人は対照的だったなぁ、とデビュー当初からの活動、歌、そして二人の現在を思い出してみて、そう思ったことからだった。特に、二人に日本中が熱狂していた頃、二人の現在の姿を想像できた人はいたのだろうかと思う。二人の全盛期というのは、どちらも超人気歌手で、歌のパフォーマンスを超えて、そのファッションから、私生活、テレビを通じて見れた一挙手一投足が憧れの的であり、みんなが注目していた。そして今回は、二人のデビュー当初とか、作品の細かい部分とか、お互い第一線を引いた現在について、今回考察してみた。

まず、安室奈美恵さんは、スーパーモンキーズというグループから独立する形でデビュー。卓越した歌唱力とダンスが最大の魅力。デビュー当初は、同じ小室ファミリー華原朋美さんとの比較が多くて、完全無欠の安室奈美恵と少し抜けてるけど愛嬌のある華原朋美みたいな構図になっていたような気がする。

そして、浜崎あゆみさん。最初にテレビに登場した時は、不思議キャラというか、おバカキャラのようなものを演じていたような感じであったが、実際に歌うとその印象がガラッと変わり、繊細な声の中にも力強さがある新しいタイプの歌手という印象を受けた。

ここで、私の立場を明かすと、私は浜崎あゆみさんのファンであった。もちろん、安室奈美恵さんも大好きで全ての曲を聞いていたし、圧倒的な歌唱力とダンス、ルックスも全て素晴らしかったが、浜崎あゆみさんの歌の歌詞、これは本当に青春時代の自分の心を本当に鷲掴みされたという思いだった。

私の個人的な印象だが、安室奈美恵さんというのは、強さの象徴だった。全てが揃って、誰もが認める完璧な歌手。それに対して、浜崎あゆみさんは、弱さの象徴。安室奈美恵さんは、テレビに最初に出た時から等身大の自分をお茶の間に見せつけ、ドジな一面も余すことなく、さらけ出し、あの完全無欠な姿からは想像出来ないようなあだ名、アムロちゃんと呼ばれ、親しみさえ持たれるようになった。そんな姿もまた、とても強い人が出来ることだと思う。そんな自信と才能に溢れていたから、多くの人が魅了され、アムラーと呼ばれるファッションを真似したり、その人気は社会現象化した。そして、人気絶頂の時に結婚もする。本当に一本筋が通っていて、まさにカリスマと呼ぶのに相応しい強さを持っていた。対する浜崎あゆみさんは、キャラクターを作るところから始まり、爆発的に売れてもなお、どこか不安げで、だんだん衣装が派手になったり、自分自身をすごく加工してしまい、結婚など私生活も非常に不器用だったように思う。そんな彼女の胸の内が、その歌詞に全て表れてくる。きっと彼女はどんなに成功しても、心の奥底にあるコンプレックスとずっと戦っていたのではないか、と私は思っていた。そして、コンプレックスまみれの自分とどこか重ねてしまっていた。

自分の弱さというのは、なかなか表には出せない。いつでも強くいたいというのがみんな思っていることだと思う。だから、本当は安室奈美恵さんのようになりたいのだ。でも、やっぱりなれない。そんな弱さを歌手として大成功を収めた浜崎あゆみさんが持っていて、それを名曲に乗せて、我々に届けてくれたこと、それで一体どれくらいの人が助けられただろうか。もちろん、彼女は直接それを口に出して伝えたことというのはあまり見たことがない。しかし、その歌詞にはどことない寂しさ、悲しさ、弱さが、初期の頃から後期までずっと一貫してあったように思う。だから、彼女の歌には特別な力が込められているように思えた。

私は浜崎あゆみさんの生い立ちなど、よく知らないし、知りたいとも特に思わないが、きっと大きく傷ついたり、挫折したり、裏切られたり、色々あったのかなぁと想像する。もちろん、安室奈美恵さんも同じような経験はしていると思うが、彼女はそれをはねのけるパワーがあった。浜崎あゆみさんは、それを全て受け入れて、溜め込んで、歌詞として届けていたように思う。だから、二人から受ける印象はまるで違った。

そして今、安室奈美恵さんは、みんなに惜しまれながら、引退をして、きっぱりと芸能界から去った。この辺りの決断とか、行動力とか、流石である。自分の道を突き進むスタイルは最後まで変わらなかった。一方、浜崎あゆみさんは以前のような歌手活動ではないものの未だに続けており、もちろん引退して欲しいわけではないが、かつてのような制作意欲ももうなくなりつつあるのではないか?と心配もしているし、余計なお世話だが、結婚や出産も含めて、本当に自分のやりたいようにやっているのかと、浜崎あゆみさんも相変わらず不器用に生きているなと感じるのである。そして、きっと上手く生きられない人達はみんな彼女の近況を耳にし、どこか共感を覚えてしまうのだろう。最後まで対照的な二人だなと思うとともに、どちらも二人らしいと思ってしまった。

歌手としての成功はどちらも同じくらいで、彼ら以降、ここまで人々を魅了した歌姫は日本にはまだ現れていない。そして、これからも現れるのかは分からないくらい偉大な二人だった。しかし、どこまでも強く、みんなに祝福されて結婚出産をし、惜しまれながら、憧れの的のまま引退していく安室奈美恵さんと、どこまでも弱く、不器用で自分の好きなようになかなか生きられない浜崎あゆみさん。こんな二人が同じ時代に活躍していたのが信じられないし、そんな時代にJpopにはまり、リアルタイムで追いかけられたことは自分にとって、とても幸せなことだったなぁと思う。

そして、また二人の曲を聞いてみたくなった。