昔ながらの床屋について

昭和初期から営業してるような床屋は未だに色んなところで見かけるが、確実にその数は減っているのだと思う。逆に、1000円カットやオシャレな美容院は増えている。

私にとってみると、1000円カットがあるなかで、昔ながらの床屋は4000円なので、4倍かかるのは高いとも言えるが、こういう床屋は大抵、すぐに顔と名前を覚えてくれるし、そのうち何も言わなくても、出来上がるので、本当に楽であるし、何よりアットホーム感がとても落ち着く。もちろん、美容院も通えば同じようなことになるとは思うが、そこそこ高いということと、髭剃りがないことと、シャンプーが上向きなのと、そもそも美容院というだけで敷居が高いので、美容院へ行くのは気が進まない。だから、私にとって、昔ながらの昭和スタイルの床屋は必要不可欠な存在だ。

しかし、先週末、いきつけの昭和スタイルの床屋に子ども達も連れて行ったら、実は今年いっぱいで店を閉めるんだぁ、とサラッと言われた。その床屋は同じ場所で営業して、4代目だったらしいが、もう夫婦ともに高齢とのことで続けていくのは大変だし、跡継ぎもいないので、元気なうちに止めて、老後を楽しみたいとのこと。確かに床屋というと土日もなく働くことと、有給休暇があるわけではないため長く休むと収入がだいぶ下がる。よって、旅行とかも行けなかったんだろうなと想像する。

とは言え、やはり私にはこういう床屋がぴったりだったし、子どもたちもみんな2歳から通っていてすっかり慣れていたので、なくなってしまうのは本当に痛い。

そこで、何故この昭和スタイルの床屋がなくなってしまうのか、考えてみる。ちなみに、私が昭和スタイルの床屋に行きはじめたのは、社会人になってからであり、学生時代はとてもではないが、この4000円が払えず、1000円カットユーザーであった。よって、昭和スタイルの床屋が減っている理由の一つはこの値段かもしれない。シャンプー、マッサージ、髭剃りなど全て込みでこの値段なので、費用対効果はかなり高いが、それらが必要のないサービスだと思ってしまう人にとっては、1000円カットと比べてしまうので、高いと感じる。次は、よほどのことがない限り、どの客もだいたい同じような髪型になって終わること。いくつかのパターンがあって、大まかにどこかに分類された後、耳を出すとか出さないとか、細かい調整が入るくらい。よって、定型パターンに当てはまらない場合には思い通りの髪型にはならないのではないか。私の場合には、定型パターンに当てはまるので、逆に、細かい注文は不要で半ばお任せでちゃんと仕上がることから、この定型パターンシステムは非常に有り難いのだが。次に、下向きシャンプー。美容院は上向きで、ゆっくりしながら髪を洗ってもらえるが、床屋は下向きなので、美容院のようにリラックスは出来ない。なんとなく雑に洗われてるような気がするのかもしれない。ただ私は、洗ってくれる人側に顔を向けるのは、例え目隠しタオルをつけてもなんとなく嫌なので私は下向きシャンプーの方が好きである。そして、下向きの方がしっかり洗えるように思う。何故なら、下向きなら髪というか頭全体が見せられるが、上向きだと肝心な後頭部が洗う側からは隠れてしまう。

続いて、どこで髪切ってるの?という質問に対して、床屋とは言いにくいからというのもあるような気もする。青山の美容院とか、行きつけの美容師さんのお店とか、ブランド志向な思考からすれば、近所の床屋と答えるよりはいいのかもしれない。ただ、相手にどう思われようといいものを追求するべきだし、そもそも近所の床屋の何が悪いのか。

そして、最後はお客さんが減ったわけではないパターンで、今回の私の行きつけの床屋さんのように高齢化し、後継者がいないというもの。昭和スタイルの床屋は、店舗が住宅と一体となっているような形の家族経営が多いように思える。よって、子どもが継がないとなると、もう潰すしかなくなる。また、労働条件はかなり過酷になる上、サービスから考えると、客単価が高いわけでもない。店舗に何人か美容師がいて、回せるお店とは少し違うので、子どもとしても、なかなか継ごうという気にならないのかもしれない。上記のように、床屋離れもあるので、なおさらである。

こう考えているうちに、そもそも床屋、つまり理容師になるためにどうすればいいのかというと、国家資格をとる必要がある、というところまではなんとなく知っていたが、美容師になる人のように専門学校があるのかとか知らなかったので、少し調べてみた。すると、美容師になるのとほぼ同じように、専門学校に行く必要があり、学ぶべき技術も多く、美容師になるのと同じか、或いはそれ以上に大変な道のりであることを知った。これだと確かに、後継者不足になるのは理解出来る。つまり、家業を単に手伝いますというわけにはいかず、ハードルが高い。

以上、寂しさに任せて一気に床屋について書いてみたが、このままだと昭和スタイルの床屋は何年後かには全てなくなっているかもしれない。これを読んで、美容院から床屋に切り替えてくれる人がいるかどうか。笑