子どもの将来について

まだまだ先の事だとは思うが、子どもの将来、例えば進学とか、就職とか、結婚とかについて、親がどこまで口を出すべきなのかは、非常に悩みどころではある。

その理由として、押し付けると見放すのさじ加減が難しいところだと思う。まず、価値観や幸せの基準を押し付けることは最も避けるべき行動だろうと思う。例えば、いい大学へ行けだとか、大企業や公務員を目指せとか、結婚して子どもを作って孫を見せろとか、などなど。しかし、我々、親はここまでの人生の過程でたくさんの経験をしたり、色んな経験をしている人に会ったりしながら、人生の教科書を自分なりに作り上げてきた。その中で、自分はここで失敗したなぁとか、あの人はあそこで上手くいったとか、どうしてもそうなって欲しくない人の人生があったり、子どもの幸せを思うがあまり、色々言いたくなってしまうのは分からなくはない。しかし、自分もかつては子どもで、色んな大人が正解を教えてくれても、なかなか理解しなかった自分を思い出せばよく分かるはずだが、大人のこういう言葉はほとんど聞き入れられない。何故なら、大人達が自分の人生の教科書を手に入れられたのは、他でもない自分自身で失敗したり、苦しんだり、汗や涙を流してきたから、自分の、または他人の成功や失敗を自分の尺度で測り、理解出来るためであり、痛みのないところで聞いた言葉には実感もないので、全く心に響かないのだ。

しかし、だからといって、勝手に生きて下さい、と見放すような態度もまた違う。全て自分の責任でやりたいようにやって、いくらでも失敗すればいいと放任してしまえば、なんで教えてくれなかったの?とか、なんで助けてくれなかったんだ?とか、親の愛情すら感じなくなってしまうだろうから、やはり親としての役目をある程度、果たすべきではある。

そして、まず思うことは、小さな失敗をたくさんさせてみるということである。大きな怪我をするようなこと、または将来に大きな禍根を残してしまうようなこと、もちろん人生はやり直しが出来るとは言え、大きく遠回りさせてしまうようなことも避けてあげながら、少し涙を流したり、血を流したり、痛みを感じるような失敗体験をさせてあげること。これには、挑戦をさせることが大事で、しかも上手くいかないだろうなぁというような難しい挑戦で少し挫折を味わうようなものや、困難を体験してもらうこと。その中で、苦しさや悔しさから立ち直る方法を自分なりに考えたり、時には向き不向きに気がついたり、または克服して乗り越える楽しさを覚えたりしながら、自分の将来を切り拓く力をつけてあげることだ。

もう一つは、さり気なく日々の生活の中で親の哲学を伝えてみること。例えば、ワイドショーを観ながらでも、この芸能人はこういうところがすごいとか、何かの事件の時には、こういうことをするとこういう人生になるんだね、とか、なんとなく、さり気なく、押し付けるわけでもなく、ステレスマーケティングのような手法だが、きっといつか思い出してくれることを願ってやってみたりする。直接本人に対して言った言葉は反発もされるだろうし、先程も書いたようにそもそも理解出来ないというのもある。しかし、テレビや映画などで一緒に疑似体験を通じて、同じ感情を共有した時には、ステレスマーケティング手法で親の哲学が理解されやすくなる。それは本人に対して、言われてるわけでもなく、あくまでテレビの中の人に向けていて、客観的に捉えられるからという側面もあるとは思うが、親の考え方や価値観をこういうところで共有しておけば、いつか思い出して参考にしてくれると思うのと、何か対立があった時でも、冷静になった時には、うちの親はこう考えるはずだと、分かってもらえる。

そして、最も重要だと思うのが、子どもは子どもなりに色んな経験を家の外でしていたり、感じたりしていて、それを家の中では隠していて、心の中にしまい、ポーカーフェイスでいるケースである。進学、就職、結婚などは突然決まるものではない。日々の何気ない日常の積み重ねが、大きな決断のタクトを握っている。だから、日々の子どもの変化には常に気を配り、助けが必要なら助けたり、逆に突き放してみたり、親という漢字にあるように、常に近からず遠からず、そばに立つ木から子どもを見るように努めることが必要なのかもしれない。

誰しも親なら子どもが、自分の人生は失敗だった、生まれてこなければ良かったなんて思って欲しくないと思うがあまり、過保護になってしまう。しかし、それでは本当に親がいない状況で子どもは生きていけなくなるし、親に守られて成功してきた人生では、自信ももてなくなる。また、自分で決断し、自分で経験し、失敗しなければ親の言葉の意味は分からない。

意外と長くなってしまったが、まとめると、子どもの将来をどう親として、大きな失敗をさせないように、子どもが生まれてきて良かったと思える人生にしてあげるには、まず挑戦させて、親の哲学をさりげなく伝えて、最後はじっと見守り、最低限の手助けをするということなのだと思う。

前にも少し書いたが、やはり子どもとの時間をどんな形でもいいので、物理的に長く取るということがきっと大事なんだろうなと思う。大きなイベントに合わせて時間を取るのではなく、何気ない日常を出来るだけ一緒に過ごす。これがきっと親の出来る最大の子どもの将来に対する投資なのかもしれない。