TikTokについて

アメリカと中国の覇権争いの一つとして取り上げられているのが、アメリカでのTikTok禁止法案。

実際にどうなるのかは不明であるが、こういう案が米国で出たということ自体とても残念であり、かつ民主主義や自由主義の敗北なのではないか?と考えさせられた。

遡れば、東西冷戦からになるのか、当時のソビエト連邦と米国の、社会主義vs民主主義の構図があって、日本では、前者は国や政府が国民を統制して、後者は国民が政府を動かすという形で報道されて、教育もされてきたので、民主主義は素晴らしい、言論の自由と開かれた報道、国民のための政治なんて思って生きてきた。

しかし、日本において、だんだんと民主主義の綻びを見かけるようになる。それは、例えばNHKという組織であったり、その他のマスメディアというのが、誰のために、何のために、どんな放送をしているのか、ということが明るみに出ることが多くなったことで、民主主義の根幹を担うマスメディアが信用出来ないという人が日本で増えてきたことである。つまり、やっていることが、"社会主義国家では情報が国や政府によって統制されています"、と習ったことと同じことが起きていると多くの人が感じている。むしろ、あたかもそうではないようにして、実際にはそうなってるという時点で、それを最初から認めている社会主義の方がマシなのではないか?という気さえするのだ。

言うまでもなく、日本の民主主義は欧米から輸入されたもので、明治時代から人権などの概念を取り入れ、戦後のGHQの下、米国式の民主主義が今の日本の民主主義のお手本になっている。よって、日本が偏重報道があったりで、隠れ社会主義国家になったとしても、米国は今までのように、理想通りの民主主義を貫いてもらいたい。つまり、国民が自由に発言をし、マスメディアが公平に国民の意見を吸い上げ、政府を監視し、不正を暴き、政府と国民の良い関係構築を促し、本当の意味でof the people by the people for the peopleの政治を実現してて欲しい。

さて、話はガラッと変わって、日本から中国へ出張したりすると、LINEやらInstagramなどのSNSが使えないということを経験する。それは言わずと知れた当局からこれらの媒体の使用が認められていないためである。最初、このようなことを知った時に怖いと感じたのを覚えている。日本では普通に使えてるものでも規制して、監視して、自由を奪っているというところへ短期間でも滞在するというのが、何となく怖かったのだ。そもそも、日本の報道の中国共産党は怖いという先入観の植付けもあり、余計にそう感じたのかもしれない。

そもそもなんで中国共産党はこのようなアプリを禁止するのかといえば、このようなアプリが個人発信で何でも情報を拡散出来るからである。つまり、統制が取りにくいというのが一番であろう。しかし、完全にそのようなSNSを国民から奪えば影で横行するだけだから、同じような機能を持つアプリを中国共産党の管理下で作り、そちらを使えと促しているのだった。

米国発信の様々なSNS はやがて世界を席巻するようになる。特にfacebookYouTubeTwitterInstagramなどの影響力は絶大で、テレビや新聞など既存のマスメディアに触れている時間よりも、若い世代は、と言っても40代以下は、長くなっているのが現状である。これらのSNSが優れているのは、とにかく検閲無しで素人、つまり一般市民が何の規制もなく、まずは好きなことを好きなようにパブリックに発信出来ることである。もちろん、内容によっては規制されることも多いが、とにかく一度は世に出る。こういうものがなかった時代には一般市民の意見は近くのコミュニティのみで共有され、新聞などマスメディアへの投稿とか、何か特別なことがない限り、見ず知らずの人への発信なんて到底出来なかった。

つまり、SNS というのは民主主義の根幹である言論の自由報道の自由を体現したものであるように思っていた。しかし、いくら素晴らしいものでも、使い方を誤ってしまう人も多く、問題があることは百も承知であるが、それをはるかに上回るほど、有象無象が発信できるようになったことはとても意義深いと思っていた。

しかし、それをやはり社会主義国家の中国は規制したので、伸びた羽が取られたような気がして、怖いという印象を持ったのかもしれない。そして、そのようにSNS を規制していた中国政府に対し、欧米諸国というか、特に米国は反発していたし、報道の自由度のない国として批判してきた。日本も報道の自由度ではしばしば問題になるが。。。

そんな中国から出てきて、世界を席巻したSNS が今回のテーマのTikTok である。

最初のイメージは、音楽に合わせて踊る動画を投稿するアプリというイメージで、全く興味がなかったので、私はインストールしたことがなかったが、最近米国がこれを禁止にすると発表してから、色々見てみると、短いYou Tubeというか、ダンス以外にも色んなことが発信されていることに気がついた。つまり、これまで米国発信だった様々なSNS とほぼ同じものになり、また登録者数というか利用者数も匹敵し、そして利用している年齢が若い世代が多いことなど、影響力が強大になってきているらしい。

ここまでをまとめると、民主主義の根幹は言論の自由であり、米国は民主主義の日本のお手本。そして、SNS言論の自由の象徴であり、それを規制していた社会主義国家の中国政府は欧米から批判されていた。

そして、今回、米国がSNS を規制する案を出してきた。理由はTikTok が中国政府の管理下にあり、情報操作が行われたり、個人情報が中国側に漏れる危険があるからだとか、言っているが、これはそのまま中国が米国のSNS を規制したときの理由とほぼ合致しており、皮肉にも、欧米がこれまで批判していた中国政府の対応と同じことをやってしまっていたと言わざるを得ない。まさに、天に唾する状態なのではないかと思う。

もちろん、細かいことはあるし、陰謀論や裏取引なども関係するのかもしれないが、私のような一般市民が知り得る情報だけで、この米国のTikTok 規制案をみると、結局、民主主義には限界があり、社会主義的に情報を統制し、国民を管理しないといけないと、米国が民主主義の敗北、国家と報道、マスメディアのあり方について、ロシアや中国と同じ立場になってきたのではないかと危惧している。なので、冒頭で書いたように、残念だと思うとともに、民主主義や自由主義の敗北に思えたのだ。

思い出してみれば、Twitter 社がトランプ大統領が差別的発言をしたので、アカウントを抹消するという措置をしたが、差別的発言だけを削除すれば良かっただけではないか?とも思った。その他You Tubeや他のSNS でも政治的な発信はバンされるということが起きているとも聞くので、米国発のSNSでも報道規制、検閲が行われ始めているのでは?となると、米国はすでに民主主義国家ではない?、とまで勘ぐってしまう。

SNS はまさに一般市民が得た民主主義の切り札である。アメリカが銃社会になったのは、政府だけが軍隊を持ち、その軍事力でもって、国民を脅し、統制することがないように、国民も武器を持ち、いつでも政府からの攻撃に対抗出来るようにしている、と聞いたことがある。もし、そうであれば、銃社会というのもあながち悪くないのでは?という気がしていた。

そして、SNS は、ペンは剣よりも強しではないが、武力ではなく、知力で政府に対抗する手段になり得る。銃社会の米国は今、SNS の規制を進めている。いわゆる刀狩り。民主主義の行方が気になる。